氣鍼医術症例ブログ〜難経69難本治法の実践日記(はてな版)

脉診流「気鍼医術」創始者で臨床40年、福島弘道先生の直弟子である葛野玄庵による症例ブログです

補講(平成30年度5回目)を開催いたしました

数あるブログの中から、当「氣鍼医術症例ブログ」をご訪問いただきありがとうございます。
毎月第4土曜日は受講生・既卒生を対象とした補講です。7月は台風接近の為中止になったので、今回は平成30年度5回目の開催となります。本日はその報告をさせて頂きます(文責:普通部受講生M)。

開催日:2018/09/22
開催場所:漢医堂三ノ宮分院
講師:葛野玄庵 

 

今回の報告者Mは、補講参加2回目です。新米受講生のMにとっては、補講への参加は非常にハードルが高かったのですが、前回より意を決して参加させて頂いております。お恥ずかしながら案の定、自分の未熟さと勉強不足が見事に露呈されます。
今回の補講は、3名の参加者を葛野先生が診断から証立て、治療されるなかで、質疑応答する形で進められました。先生のするどい質問に答えることができなかったり、脉の変化を捉えることができずタジタジの場面続出でしたが、通常の研修では聞けない内容が盛りだくさんで、とても有意義な、あっという間の2時間でした。

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症例1


モデル患者)50代女性


主訴)
・右示指の引きつるような痛み
・両下肢前脛骨筋部(陽明胃経上)の引き攣れ

 

子午)
・両下肢の引き攣れを陽明胃経病症と推測し、左右心包経(大陵)に金鍼50番を当て,左大陵で脉が締まる方向。
・右示指を大腸経病症と推測し、左腎経(太谿穴)金鍼50番を当て検脉するも脉締得られず。右太谿でやや締まる方向。同側子午か?
腎虚の可能性有とみて右肺経(魚際) 金鍼50番を当て検脉。脉締の方向。


腹氣鍼)
中脘・膻中・気海・左期門 脉締の方向。


奇経)子午・腹氣鍼診断より
右陥谷-左合谷 ×
右陥谷-右合谷 ×
右陥谷-右後谿 ×
左合谷-左申脈 ×
右陥谷-左合谷 ×
左合谷-右陥谷 〇

証)子午、腹氣鍼、奇経を鑑みて、腎虚左心包虚と確定。

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治療)
●本治法
痛みや引き攣れの症状があることから「体重節痛」を主る兪土原穴を使用する。右太谿、右太淵、左大陵にステンレス5分鍼0番にて補法。陽経の処置として左合谷、右陥谷の下圧瀉法を施し、本治法を終えた。
Point ※施鍼後、2~3分したら脈の確認必要。変化していることがある。証があっていれば、施術直後は不安定な脈状でも、2~3分経つと安定してくることが多い。
●標治法
患部から考察し、下肢引き攣れに対しては督脈上L3~L5椎間に5分鍼0番で気鍼(1mm) (補中瀉法)。手示指痛には督脈上C5~C7椎間を気鍼(補中瀉法)。その後、督脈上椎間反応点に絹状灸(9分灸)施行。
Point ※督脈上椎間刺鍼は最初から深刺せず 気鍼からはじめる。また、患部が指先(末端)にある程、刺入深度が深い傾向にある。
※施灸は人により感受性が違うことに留意する。男性は怖がる人多い。また、色白の女性に対する施灸は絹状灸でも灸痕が残り易いので注意を要する。
その他、頚肩背部の凝りが著名な為、頚部・肩背部反応穴に気鍼(0.1mm程度)で補中の瀉法を行う。
Point ※甚だしい凝りには刺入したくなるが、皮膚に艶が出る程度で止めておき、脈が崩れないように留意しながら、温灸やホットパック等で気持ちよくしてあげるのがコツ。
腹本治として気海・中脘・膻中に補法。
裏本治として右腎兪・肺兪、左厥陰兪に補法


経過)
治療後まだ少し。前脛骨筋部の張りが残っているとの事。
再度、本治行い、特に子午関係にある左心包経を入念に補って症状消失。 
Point  ※ 徹底して子午で追いかけると、堰き止められた物がパット流れ出るが如く、症状が消失する瞬間がある。しつこく追いかけることが大事。

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症例2

症状)
痰の絡み・咳嗽あるが、片寄り症状がない為、腹氣鍼診断から始める。

 

腹氣鍼診断)
膻中・右期門、脉締方向。気海・中脘、脉グングンと強くなる。

Point ※脈の変化を捉えきれなかったので、脈の診かたに注意するよう指摘を受ける。姿勢を正し、患者の手首をやや反らすようにして常に定位置で、あまり指を立てすぎずに指腹で鉛筆の形を探るようにゆっくり前後にずらすように動かしながら診る。

 

証)
右心包虚左肺腎実と判定。

 

治療)
●本治法
右曲沢(心包)に補法
右曲泉(肝経)に補法
孔最・尺沢(肺経)に瀉法
陰谷・太谿or照海(腎経)に瀉法
陽経は奇経的組み合わせが左陥谷-左後谿と考えられるので、
左陥谷(胃経)・左後谿(督脈・小腸経)に陽経処置を施す。

Point ※ 実は、要穴を指で触れて脉が最も大きくなる穴を探る。
    ※ 瀉法は実が取りきれるまで2~3穴使うことがある。
●標治法
顔面部・側頸部・後頭部に施術。
(氣鍼)
清明、攅竹、陽白、瞳子髎、頭維
脘骨、風池、後風池、天柱
(空中散鍼)
胸鎖乳突筋部
(深瀉浅補)当てるだけ
甲状腺

Point ※ 清明穴は、督脈・任脈にも通じている為、体全体に好影響を与える。眼病の特効穴でもある。
※ 顔面部への施術は、陽経の邪を払い、頸部への施術は、頸部で滞っていた氣が体幹へ流れ易くなる為、身体全体の氣の巡りが良くなり好影響を及ぼす。その為、脈が柔らかくなり艶が出る。

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症例3

モデル患者は、中村泰山先生です。
葛野先生より血圧測定の指示あり。(BP157/98)
片寄り病症がない事から腹氣鍼診断から開始。

 

腹氣鍼診断)
中脘・下脘・気海が脉締。

奇経)
左外関―左照海で脉締。
Point ※本例の場合、照海穴(腎・陰きょう脈)は腎経の虚実の左右の関係を診る。子午拮抗経の大腸経は、意識しない。

証)
脾虚腎虚 右同側と判定。(中村先生曰く、月齢が大潮に近づいているので、適応側が移っているとの事)

 

治療)
●本治法
血圧の上昇が認められるので「逆気而泄」を主る合水穴を使用。
右陰陵泉(脾経)補法
右曲沢(心包経)補法
右陰谷(腎経)補法
陽経の処置として外関(三焦経・陽維脈) 下圧瀉法
●標治法
腹本治
下脘・膻中・気海に補法
顔面
氣鍼)
清明、攅竹、陽白、瞳子髎、頭維 等に補中の瀉法
後頸部
亜門 天柱 風池等に太めの鍼で空中瀉法(鍼を当てない)
Point ※亜門穴付近に発赤、熱感があるので刺入しない。灸はダメ。
耳鳴り、目の炎症、頸部の炎症等には、首周辺の施灸は難しいので注意が必要。
肩背部
反応箇所に少し下圧をかけて瀉法

裏本
右脾兪・厥陰兪・腎兪に補法

経過)施術後血圧151/86(術前157/98)
Point 脉をみて、血圧の数値のおおよそが判る様に修練が必要。

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まとめ(葛野先生とのQ&A)

 

Q1.中村先生の症例で発赤熱感のある後頚部亜門穴は、あまり触らないほうがいいとのことでしたが、腰部への施術の可否は?
A. 腰部への施術は可。熱を下にひく意味がある。また、相似象的に考えて下部腰椎を施術対象とすることができる。

 

Q2 腹本治や裏本治の手技で、鍼の回旋の左右方向の別は?
A. 適応側方向に回旋している。

 

Q3.腹本治や裏本治は本治法ですか?
A.本地法ではない。本法は本会独自の方法である。
素問九鍼十二原編の教示のように、鍼数は少ないほうがいいので、良脈に至ればその時点で治療終了が理想。目指すは一穴治療。しかし、患者に満足して頂くには、脉を崩さない範囲で付加治療は必要。現在のところ、本法は、本治法を補完する意味で問題なく行えている。但し、本治法同様、気が漏れないよう手技には十分に注意が必要。

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終わりに)
新米受講生Mにとって、荷が重い役目でした。なんせ、気鍼医術の理論の知識もあやふやで、脉の変化も捉えられない程度ですから。その上、文才が無い。
今回を契機に、心機一転、技術修練に励んで行きたいと思います。今後ともご指導の程よろしくお願い申し上げます。

 

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